憧れの人形作家・辻村ジュサブローさんが、NHKテレビで語っていた創作の手法を、古い記憶をたぐりつつ、ちょっと紹介します。
京都物産展で買ったはさみ

箱を開けてみるとこんな感じです。

京都市中京区の刃物のお店、京打刃物司「菊一文字」の物です。購入した2000年前後の価格で、3800円(税別)でした。105mmのはさみで、何故にこんなに高いのか?
本体についているシールの「てづくり」だから、という理由もありますが、刃先に特徴があるのです。それは、こちら↓

あんまり伝わらないか。笑。
はさみの刃先が軽く上向きに反っているのです。職人の手仕事による「はさみ」。これを当時、青森・松木屋百貨店の催事場で見つけた時は小躍りするような気持ちでした。
「ジュサブローさんが使ってたはさみと同じ物だ!」と。
たびたび同じことを書いてくどいのは承知ですが(笑)、閉店した松木屋の「京都物産展」は、このような素晴らしい「道具」にも出会えるような、イベントでした。

辻村ジュサブローさんのこと
私は手芸好きの母の影響で、NHKの手芸番組「婦人百科」を子供の時から見ていました。この「婦人百科」は時代に合わせて、タイトルや内容のリニューアルを重ね、一時期は「おしゃれ工房」、そして現在は「すてきにハンドメイド」という番組になっています。
その「おしゃれ工房」の時代に、あの人形作家の「辻村ジュサブロー」さんが干支の人形の作り方を教えていらした回がありました。当時のテキストブックによると、放送は1998年1月でした。1998年の干支・寅年にちなんだ小さな虎のお人形を、丁寧に教えていらっしゃいました。
手法は違えど、私自身が干支を題材に「石粉粘土」で立体の制作をしていたのもちょうど90年代だったのでタイムリーに感じ、テキストを買って真剣に拝見しました。
この番組内であったか、あるいは別のジュサブローさんのドキュメンタリー番組であったか、しかと覚えていませんが、NHKで流れた番組の中で、ジュサブローさんは刃先が反ったこのような握りはさみをお使いでした。
私は以前より、ジュサブローさんのあの人形たちの顔や体の、ちりめん生地はどうやってぴったりと貼りつけられているのだろうと疑問に思っていました。
その方法は、ちりめんを前もって水で濡らしてわざと縮めてから、改めて伸ばしながら接着していくという手法でした。(注:記憶が間違っている可能性もあります)
水に濡らして縮めた生地でも、曲面に貼り付ければ生地は多少余ります。そんな部分なんて最初から無かったように滑らかに切り取ることが必要です。その時に、切っ先の反った薄い「握りはさみ」が重宝する、という意味のことをジュサブローさん出演の番組でおっしゃっていたかと記憶しています。
それは私が一番知りたかった、ジュサブローさんの「企業秘密」でした。
私はそれを真似て、実際に生地を濡らし縮め、本体に添わせながらボンドで接着し、生地の余分は松木屋で手に入れた、先の反った握りはさみを使って切る、という方法を自分の市松人形の顔にぶっつけ本番で実験してみました。
実際に自分が使った事例
この下の写真の人形の右首にある傷は、「ジュサブロー方式」(←勝手に命名)を用いて、この握りはさみでで余分な布をカットした名残です。
私が使った生地はちりめんではなかったものの正絹の布で、少しばかり縮みました。だからこの顔面の面積に対して、継ぎ目はこれくらいで済みました。いわば、縫わないダーツのようなものです。
一般的な真っすぐで分厚い握りはさみとは違い、薄くて反っていて、とても使いやすかった記憶があります。使い勝手がよかったので、お値段が高いのも頷けます。
30年近く前の値段ですから、今ならこの時よりもお高いかもしれませんが。

NHK人形劇「新八犬伝」
私が辻村ジュサブローさんの人形を初めて見たのは、NHKの連続人形劇「新八犬伝」が最初です。1973年(昭和48年)の4月からNHKで放送された連続人形劇でした。
当時はオイルショックの頃で、しかもビデオテープは高価で貴重だったため、NHKでさえ上書き使用していたというのです。ちょっと~、なんてことを!
当時のNHKは、現在のようにアーカイブで残すという発想がなかったようです。昭和時代の貧しかったエピソードです。
芸術的で革新的な人形の素晴らしい人形劇だったのに、一部を除いて残っていないとは、本当にもったいないことです。
家族が「NHKクロニクルシリーズvol.4『新八犬伝』」を持っていますが、このDVDに収録されているのはたった3回分。私が見たかったシーンは収録されていませんでした。あの頃は一般家庭にビデオデッキも普及していない頃でしたし、時代が悪かったです。
最後におまけの写真を2つ
①爪切り
お高い握りはさみを買ったら、お店の人が「粗品」的に下さったお店オリジナルの爪切りです。一見よくあるタイプのレトロな形状ですが、さすが老舗刃物屋クオリティー。使用感は段違いです。
自分専用にして、他の家族から使われないように隠しています。ヒヒヒ。

➁年賀状に貼ったシール
「市松人形」その①で紹介したはがきに貼った、シールの残りが出て来ました。当時仕事で使っていたMacG4で制作。しかも当時、既に時流に乗り遅れたイラストレータ8.0を使用。時代感よ。笑。
年賀状は、時間に余裕があれば現像所で文字を白抜きしてもらいましたが、前年の羽子板の時にイラストレータ8.0で作ったシールでイケたので、この時もシールにしました。費用的にも助かりました。
ちなみにセロテープの経年劣化は ↓ こうなりますよ。笑。

これで、市松人形の話は終わります。